最近、「語りかけ」中心でおうち英語をやってきた、という方から、たて続けにご相談を受けました。
おうち英語の「語りかけ」については、以前も記事にしたことがあります。
「親の語りかけで気をつけること」
「『語りかけ』に行き詰まりを感じたら」
「インプットとしての語りかけ(バイリンガルの育て方・その10)」
↑の記事にも書いた通り、私自身は積極的に英語の語りかけをしてこなかったのですが、最近は、語りかけによるおうち英語が人気のようです。
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語りかけ自体は、家庭内で英語を話しても良いという安心感を子供に与え、子どものアウトプットを促すので、できるお母さん(お父さん)は積極的にやっていいと思うのですが、子供をバイリンガルに育てるのに必須ではありません。
語りかけをしなくても、量と質を伴ったインプットが足りていれば、子供は無意識に英語を習得し、しっかりとしたバイリンガルに育ちます。
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逆に、この「語りかけ中心」のおうち英語は、インプットが足りなかったり、また小さいうちにアウトプットが出てしまうだけに、取り組みがアウトプットに左右されやすい、という問題点もあります。
言語習得能力の高い幼児期までは、「語りかけ」で英語回路を作るぐらいのことは簡単にできてしまいますが、インプットが頭打ちになってしまうと、なかなか英語力が伸びなくなってしまいます。
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このことを考えるのに、アメリカの移民の子供のケースが良い例になります。
アメリカの移民の家庭では、親が英語がしゃべれないのに子供は英語の方が得意になってしまい、親子のコミュニケーションがうまく取れなくなってしまうケースは珍しくありません。
仮にこれを日系人の家庭(親が日本人)と仮定してみると、親子の会話は日本語なので、子供は日本語を理解し、基本的な日本語は話すようになります。
でも、子供の学齢期になると、言語のインプットが、英語の方が優勢になっていき、その後日本語の教育を受けなければ、だんだん成長していく思考を表現したり、知識や概念を吸収するには、英語でしかできなくなっていきます。
日本語の習得は幼い頃に「無意識」で済ませているので、親が話す日本語は理解できても、話す、読み書き、などの「自我」で運用する部分がどんどん弱くなっていきます。
このように、日本人の親が家で子供に日本語を話しかけていても、外の環境が英語だったら、日本語より英語のインプット量の方が多いので、子供は英語の方が得意になり、日本語は頭打ちになってしまいます。
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「語りかけ」中心のおうち英語は、日本語と英語が逆なだけで、これと同じ状態になる場合があります。
日本でも、国際結婚でどちらかの親御さんがネイティブで、家の中ではそのネイティブのお父さん(またはお母さん)と子供は英語で会話しているのに、なかなか思うように英語を習得してくれない、というご家庭は意外と多いのですが、そういうご家庭では、英語はネイティブの親御さんとの会話が中心で、それ以外のインプットが少ない場合が多いです。
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子供は、親が英語を話すから英語を習得するのではありません。
人間は(生存本能で)環境にある言語を習得するので、親の語りかけの有無にかかわらず、英語の環境を作り出してあげれば、子供は英語を習得します。
その後、適切な取り組み(教育)を足してゆけば、読み書きまでしっかりできるバイリンガルに育ちます。
その証拠に、英語育児では、英語が苦手な親御さんの方が成果が上がることがよくあります。
英語ができる親御さんだと、自分が語りかけたり教えようとしてしまう(「自我」に働きかけてしまう)のですが、親御さん自身がネイティブでない限り(または、どちらかがネイティブであったとしても)、日本のような英語を使う場所がない国では、なかなか高いレベルまではもっていけなくなります。
その点、英語が苦手な親御さんは、教材などを利用するしかなく、シンプルに英語環境を用意してあげることになるので、結果的に子供が勝手に吸収して、英語をマスターしていくのです。
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もちろん、しっかりインプットをした上でなら、語りかけをすると子供のアウトプットが出やすかったり、語りかけのメリットは大きいですが、しっかりとしたバイリンガルに育てるためには、語りかけ自体は決して必要ではなく、むしろ、しっかりとしたインプットが不可欠です。
「語りかけ」のおうち英語を楽しんでらっしゃる家庭では、是非「インプット」も大事にして、しっかりとした英語環境を作り出していただきたいと思います。
「おうち英語で子供をバイリンガルに育てたいけれど、一人でできるかどうか不安」というお母さん(お父さん)のために、「おうち英語の会」をやっています。興味のある方は、お気軽にお問い合わせください。