英語コーチとして、時々こんなご相談をいただきます。
日本で英語を学習してきて、英検1級に合格したり、TOEICで900点を超えるようになって、仕事に関することなら何とかギリギリ行けるようになりましたが、初対面の人とのスモールトークや日常会話には苦手意識が消えません。
周りの人には「英語ができる人」と思われていても、いつまでも自分の英語に自信が持てずにいます。
「万年中級」から抜け出して、自信を持って会話できるようになるには、何をすれば良いですか?
私も長いことそうでした
まず、会話は慣れの部分も大きく、アメリカで暮らす前は、私も会話には苦手意識がありました。
アメリカに行く前から通訳の仕事を始めていましたが、通訳は人の発言を訳すのでまだいいものの、何気ない日常会話は苦手でした。
もちろん、会話の練習のために、英会話学校に通ったり、オンライン英会話をやっても良いのですが、私自身が自分の会話力を上げるのに役に立ったと思うのは、「会話文の暗唱」と「ネタの準備」でした。
会話文の暗唱
私が英会話対策としてやったのは、(安上がりな)NHKのラジオ講座で、現在はもう放送していない講座の会話文の暗唱と、現在も放送中の「英会話タイムトライアル」の応答練習でした。
(テキストなしでも、放送を聞いて口に出すだけで、良い練習になります)
「英会話タイムトライアル」の応答練習は、会話の瞬発力が鍛えられるので、英語力は十分あるのに「咄嗟に英語が出てこない」という方は、この練習をするとかなり会話力が鍛えられます。
ですので、ご質問のように高い英語力がある方にはオススメです。
ですが、瞬発力がいくらあっても、そもそも言いたいことが表現できる英語力がないと、結局言葉に詰まってしまうので、そもそもの英語力を鍛えるには、まずは「自分で言える英文」のストックを増やすことが大事です。
こうした英文のストックを増やすには、私の場合は、英会話講座の会話文の暗唱がとても力になりました。
私が会話文の暗唱に使ったのは、NHKのラジオ講座の番組で、通訳学校時代には杉田敏先生の「実践ビジネス英語」という番組(当時は「やさしいビジネス英語」)の会話文を暗唱して、これで日英(日本語から英語への通訳)がずいぶん楽にできるようになりました。
少し難し目のトピックについて、きちんとした(少しお固い)表現で話せるようになりたい方にオススメです。
(長く続いた番組で、私も20年以上聞き続けていましたが、放送は2021年3月で終了しており、現在は季刊でムック本が出ています)
マーシャ・クラッカワー先生の「ラジオ英会話」という番組も、放送された当時、大好きでよく聴いていたのですが、後に会話が収録されたCDブックを買って、暗唱しました。
会話表現がネイティブっぽくて、日常会話を鍛えたい方にはオススメですが、絶版でもう中古でしか手に入らないようなのが残念です。
(いつでも、だれでも、まるごと、たっぷり、とシリーズで4冊出ていました)
また、仕事に英語が必要で「ビジネス現場ですぐに使える」表現を覚えたければ、日向清人先生の「即戦力がつくビジネス英会話」もオススメです。
海外赴任が決まったコーチングの生徒さんにも、暗唱してもらっています。
暗唱は、テキストを見ながらでなく、耳で聞いたものを再現しながら覚えていきます。
(リプロダクションと言われるやり方です)
どうしても暗唱が難しい場合は、音に合わせてテキストを何回も読むだけでも、力になります。
(オーバーラッピングと言われるやり方です)
このオーバーラッピングや音読は、暗唱ほどの即効性はないですが、毎日短時間でも長く続けられれば、いざという時にとっさに英語が口から出てくるようになります。
ネタの準備
パーティなどのスモールトーク対策には、自分に関してあらかじめ練習したスピーチの「ネタ」を準備しておくと安心です。
例えば、自己紹介用に「趣味はヨガで、週末は子供の奴隷」など、自分のことを少しジョーク交じりに伝えるセリフなど、いくつかバリエーションを準備して、練習しておきます。
私がアメリカに住んでいた時は、その土地の印象を聞かれることが多かったので、それに答える文章をあらかじめ考えておき、聞かれるたびに同じことを言ってました。
また、子供について聞かれることも多かったので、上の子の時はこの紹介文、下の子にはこの紹介文、夫についてはこの紹介文、と用意しておきました。
自己紹介1(日本から来た、子どもが2人いる、など)、自己紹介2(その土地の印象を日本との違いを比較しながら)、自己紹介3(大学院に通っていたので、そのことを詳しく)などと用意しておくと、相手によって、1だけで終わったり、3を使ったりできます。
こうやって、自分のことをある程度話せると、あとは質問して、相手の答えに適当に相槌を打っておけばいいので、会話は結構つなげます(笑)
今でも外国人と話す機会があると、この時の自己紹介を使うことがあります。
会話に対する心理的なブロック
こんな風に、「自分で言える英文のストック」を増やしていったら、あとは「慣れ」なのですが、日本人に多いのが「間違うのがイヤ」という心理的なブロックが大きくて会話が苦手な場合です。(私も昔はそうでした)
英検1級やTOEICで900点を超えるぐらいになると、相手の言っていることも理解できるし、話すための知識(語彙、文法)もあることがほとんどなのですが、この心理的なブロックが大きいと「話すのは苦手」との意識が強くなります。
初心者のうちは、少しでも英語を口にして、それが通じると「英語を話すのは楽しい!」「もっと話せるようになりたい!」と思えるのに、上級者になればなるほど、文法知識などがきちんとしているだけに、咄嗟に出た自分の英語の間違いに自分で気づいてしまい、いつまでも完璧に話せない自分に落ち込んだりします。
ですが、私達が母国語でも完璧な日本語を話している訳ではないように、英語も、ネイティブでも結構いい加減な英語を話しているものですし、ましてや非ネイティブは、それこそ堂々と変な英語を話しているケースはとても多いです。
ですから、「きちんとした英語」にこだわらずに、少しぐらい間違っていても「話そう」という気持ちで思い切って自分から声をかけていき、どんどん話すようにすれば、会話も得意になりますし、相手とも仲良くなれます。
まとめ
と、そうは言っても、やはり長年の心の習慣は急には変えられません。
私のような真面目な日本人(笑)は、「間違っても良いからどんどん話せ」と言われるより「できる限りの準備をしておく」方が、積極的に会話に入っていけるようになります。
そのための準備として、私はコーチングの生徒さんには、「会話文の暗唱」と「ネタの準備」を、せっせとオススメしています。
なお、上記のやり方は、小学校高学年以上のお子さんにも有効なスピーキング対策になります。
おうち英語でのお子さんのスピーキングに関しては、「おうち英語でスピーキングもできるようになる?」も参考にしてください。
また、英語力全般を上げるための「英語上達のためのシャドーイングのやり方」も、興味のある方は参考にしてください。
「おうち英語で子供をバイリンガルに育てたいけど、一人でできるかどうか不安」というお母さん(お父さん)のために「おうち英語の会」をやっています。興味のある方は、お気軽にお問い合わせください。
(小学校高学年以上のお子さんにも参考にしてください)