前回に続き、英語のリスニング力を鍛えるための効果的なシャドーイングのやり方をお伝えします。
英語が聞き取れるようになるために必要なことは、次の3つでした。
1. 英語の音が聞き取れる(音の習得)
→ 学習法【発音、ディクテーション、リピーティング、シャドーイング】
2. 聞き取れた音の意味が分かる(語彙と文法)
→ 学習法【単語、文法、英文読解】
3. 音と意味の処理が自動化できている (映像化)
→ 学習法【シャドーイング、リスニング】
このうち、前回は「1. 音の習得」と「2. 意味が分かる」ようになるための「単語」と「文法」までお伝えしたので、今日は「2. 意味がわかる」の続きの「精読」から解説します。
Contents
2. 精読:英文の構造(構文)と意味をしっかり理解する
精読
精読とは、高校の英文読解でやったように、主語、述語動詞、補語、目的語、挿入語、をきちんと押さえて、文型を見抜きながら、意味を確認することです。
分からない単語や表現があれば、その意味を調べ、また意味だけでなく、全ての単語の「役割」を理解して、構文(英文の構造)をつかみます。
スクリプトを見たらすぐに意味が取れる場合は、意味と構文をざっと確認するだけで結構ですが、自信がない場合は、最初は主語はこの部分、動詞はこれ、など、スクリプトに下線を引いたり記号を書き込みながら、きちんと確認しましょう。
意味だけでなく構文をつかむ必要があるのは、構文をつかめていないと、聞こえてきた単語を勝手に組み合わせて、自分の想像で内容を組み立ててしまうことも多く、そうすると「何となくこんな意味だと思う」で終わってしまい、間違った解釈をしていることが結構あります。
これでは、どんなにたくさん英語を聞いても、いつまで経ってもリスニングに自信が持てませんし、その状態でシャドーイング(意味のシャドーイング)をしても、別の場面で同じ構文の英語が出てきた時にも応用ができません。
再現性がないトレーニングをやるのは時間の無駄ですので、せっかく意味のシャドーイングまでやるなら、シャドーイングに入る前に、その英文をきちんと精読しておきましょう。
ただ、この精読は、英語を理解するためには必要なのですが、これで終わってしまうと英文読解に慣れ過ぎてしまい「後ろから訳す」癖がついてしまいます。
そうなると、読む場合には戻って読めば意味は取れますが、リスニングでは戻ることができませんので、「スクリプトを見ると理解できるけど、聞いただけでは意味が取れない」状態になってしまいます。
こういう場合は、スラッシュリーディングで、頭からかたまりごとの英語の意味をつかみながら読み進める練習をします。
スラッシュリーディングというのは、意味のまとまりごとに英文にスラッシュを入れながら読んでいく読み方で、スラッシュの切れ目ごとに意味をつかみ、決して前に戻らずに読み進めます。
そして、きりの良いところで、今読んだ英文の内容を(日本語で良いので)要約します。
スラッシュリーディングに関しては、こちらの本の解説が詳しいです。(私が書いた本ではないのですが、私もコラムにちょこっと登場しています)
これをやることで、「ネイティブが英語を話す語順」を理解できるようになります。
そして、ここまでやったら、いよいよ(意味の)シャドーイングの出番です。
3. 映像化:英語を聞いた瞬間に理解できるようになる学習法
前回取り上げた(音の)シャドーイングまでで、目的の英文の「音」はしっかり攻略しました。
そして、精読とスラッシュリーディングで、「意味」も(そして構文も)きちんと理解しました。
ここで初めて「シャドーイング」(意味のシャドーイング)に入ります。
つまり、「シャドーイング」は、リスニングを鍛えるトレーニングの最後の総仕上げです。
ここまでやることで、音と意味の処理を「自動化」して、英語を聞いた瞬間に頭の中でイメージできるようになっていきます。
意味のシャドーイング(意味と構文を意識しながら、シャドーイング)
シャドーイングのやり方は前回も触れましたが、前回の「音のシャドーイング」では、何も考えず、ただ「音だけをとにかく真似する」シャドーイングでした。
しかし、この「意味のシャドーイング」は、意味と構文を意識しながらシャドーイングします。
意味と構文を意識しながら、お手本の音を聞いて追いかけていくと、ネイティブがどこを早く言ってるか、どこで息継ぎをしているか、などが分かるようになってきます。
早く言うところは、ネイティブが「ひとかたまりの言葉」として認識している箇所ですし、息継ぎをしているところは、そこに意味の区切りがあるということです。
これを何十回、何百回と行うことで、例えば「長い主語を一気にしゃべって、動詞に入る前に一息つく」などの「英語の話し方」も体得できるようになり、流れてくる英語を必死で追いかけるだけではなく、「まだ主語が続いてるな」などと余裕を持って聞けるようになってきます。
また、最後は「暗唱」するぐらいまでやり込むと、同じ感覚を自分でもマスターできるので、スピーキング力もアップします。
意味のシャドーイングが難しい場合:音読
音だけ追いかけている時には何とかついていけても、意味や構文を意識し始めると難しくてついていけなくなる場合には、音読でスラスラ読めるようになってから、シャドーイングに移ります。
精読で意味と構文が分かったものを、スラッシュリーディングで文頭から理解できるようになったら、その英文を、意味が頭に入ってくる速度で、音のシャドーイングで覚えたイントネーションで、声に出して読みます。
この時のポイントは、速く読もうとせず、かたまりごとの意味を頭にこすりつけるような気持ちで、決して前に戻らずに読み進めます。
この「意味の分かるスピードでの音読」を繰り返して、スラスラ読めるようになったら、テキストから離れて、シャドーイングに移ります。
シャドーイングの完成度の目安
シャドーイングはどのぐらいできるようになるまで繰り返すか?ですが、目的がリスニングの上達だけなら、音が完璧に再現できなくても、完成度はそこまで求めなくてもOKです。
スピーキングを鍛えたくてやるシャドーイングなら、自分の声に意味や感情も乗せながら、音も完璧にコピーできるまで繰り返すのがオススメです。
リスニング(ただ聞くだけ):映像化
意味のシャドーイングをしっかりやったら、最後もう一度、「ただ聞くだけ」のリスニングに戻ります。
この時は、その場面、その状況、話している人の言いたいことを、映像のように頭に思い浮かべる感じで聞いてください。(これを、映像化/イメージ化/ビジュアライジング、などと呼びます)
こうした学習を終えた英文は、「聞き取るぞ!」と頑張らずにリラックスして聞いただけで、そのイメージがありありと頭に浮かびながら聞けるようになっているはずです。
英語の学習は、こういう英文を1本でも多くしていくことの繰り返しで、初見の英文でも聞き取れるものが増えていき、リスニングが上達していきます💡
シャドーイングのやり方をマスターできる書籍(教材)
こうした「徹底的なシャドーイング」のやり方を身につけるのにオススメの本がコチラです。
私がこの記事でかいつまんで説明した、集中的なシャドーイングのやり方が、事細かに解説してあり、独学でも学習し、シャドーイングのやり方を身につけることができます。
改訂前の初版は2001年の発売で、私も、発売当初(まだ子供がいなかった頃)この本を使って、「シャドーイングってこうやってやるんだ!」と目からウロコの本でした。
当時ちょうどTOEIC900点を超えたぐらいだったのですが、この本で徹底的にシャドーイングをやったことで、英語の聞き方や学び方が変わった「恩人」の一冊です。
こうした集中的なシャドーイングは、本気でやるとつらく厳しい地道なトレーニングですが、大人の学習者で本当に「使える英語」を身につけたい方には、文句なしにオススメの学習法です。
(それにしても、こんな努力なしで英語ができるようになる、おうち英語っ子は本当にうらやましいです)
「おうち英語で子供をバイリンガルに育てたいけど、一人でできるかどうか不安」というお母さん(お父さん)のために「おうち英語の会」をやっています。興味のある方は、お気軽にお問い合わせください。