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おうち英語「小学校の壁」を考える(後編)

前回は、おうち英語で子供がバイリンガルに育っても「小学校の壁」があるのでは?ということを書きました。

我が家は「小学校の壁」を感じるヒマもないうちに、アメリカに行くことになったので、そこで子供達は「バイリンガルに育った」と言えるまでになったのですが、ずーっと日本にいて、おうち英語を続けていたら、私もやっぱり「小学校の壁」にぶち当たっていたかもしれない、と最近、思うようになりました。

では、おうち英語が順調にいって、日本でバイリンガルに育った子供が小学校にあがったら、どうすればいいのでしょうか?

今日は、私なりの考えを書いてみたいと思います。

(ちなみに、これから書くことは「おうち英語で英語がかなり分かっていると思われる小学生」についてですので、「小学校で初めておうち英語で英語を始める」お子さんには当てはまりません。 小学校からおうち英語を始めるお子さんには、違ったアプローチが必要になりますので、ご注意ください。 ご興味がある方は「英語を『外国語』にしない小学生からのバイリンガル教育」をお読みください)

おうち英語で、英語のビデオ(や最近だったらインターネットの英語の動画)を平気で何時間も見ていたり、英語の本も読ませてみると読めるようになったお子さんが、一方で英語をしゃべるのはそんなに上手でなく、自分から英語の本を読もうともせず、見ていた英語のビデオや、やっと読んだ(読ませた)英語の本について、内容や単語の意味を尋ねても、はっきりとは答えられなくて、理解してるんだかしてないんだか…。

こんな状態だと、親はやきもきしますよね。

ですが、バイリンガルに育った子供の理解の仕方は、英語が苦手な大人が外国語として英語を理解するのとは、まったく違う理解の仕方をしています。

これをちょっと、日本語で考えてみましょう。

例えば、大人向けのテレビ番組(日本語)を子供も一緒に見入っていたとします。

それが結構難しい内容の番組だったので、 「一生懸命見てたけど、〇〇ちゃん、あんな難しい番組が面白かったの?」 と尋ねたら、 「内容はよく分からなかったけど、面白かった」 という答えが返ってきました。

その時、この子は日本語が分かっていない?と思って不安になるでしょうか?

考えてみれば、プリキュアでも仮面ライダーでも、けっこう難しい言葉がセリフには出てきますが、子供たちはその単語の意味は分からなくても、平気で最後まで見て、面白かったと夢中になります。 親の方も、ちょっと難しい言葉が出てくるたびに「さっき出てきた〇〇って言葉、どういう意味だか分かった?」などと、いちいち確認したりはしません。

子供の日本語(母国語)の理解は、こういう感じで進んでいきます。

バイリンガルに育った子供は、英語の理解も、この日本語の理解と同じような感じで進みます。

つまり、細かい所は理解していなくても全体から理解して、そういった言語体験の積み重ねで英語を習得し、細かい所もいつの間にか理解するようになっていくのです。

ですから、日本語の番組を見るのと同じように英語の番組を最後まで見て楽しむようだったら、それは「第二の母国語」として英語を習得している、つまり、バイリンガルに育っている、ということです。 (ただし、日本語で見たものを英語でも見る、という場合は、また少し違います。ここでは、英語でしか見ない番組でも最後まで楽しんで見る、という状態を指しています)

また、英語の本を「読ませれば(カタカナ読みではなく、ちゃんと英語に聞こえるように)読む」ということは、英語の読みも習得しています。

ですから、この時点で日本語と同じように英語も言語としての習得の第一段階は終わっているわけで、言ってみれば、「バイリンガル育児」としての「おうち英語」は修了だと思って良いと思います。

ずっと日本に住んでいる子供だったら、その子にとって本当に英語の必要が出てくるのは、学校の授業が始まる時ですが、この状態まで辿り着いていれば、中学・高校でも英語の授業で苦労することはないはずです。 (参考過去記事:「私がおうち英語されていた」

この「英語を習得させる」段階までは、やることはシンプルで誰にでもできます。

かけ流し(や親の語りかけなど)で英語回路を作り、意味づけをして、暗唱などで英語が読めるように導けば、おうち英語の「必修課程」は修了です。

そして、この「必修課程」を終えておけば、将来、子供が英語で苦労することはまずないと思います。

でも、せっかく英語育児してきて、ここまで英語が育ったお子さんを、時間のある(そしてまだまだ耳の良い)小学校のうちにもっと高いレベルまで導きたい場合、つまり「オプション」もやっておきたい、と思うご家庭も多いですよね。(もちろん、我が家もそうでした)

その場合、その先は、それぞれの家庭による「専門課程」みたいなもの、いわば「オプション」で、ここから先やることは「バイリンガル育児」ではなく「バイリンガル教育」になる、と私は捉えています。

目的が「英語を習得すること」から「習得した英語を伸ばすこと」そして「英語を手段として勉強すること」に変わっていくのです。

小学校に入るというのは、育児から教育の段階に入るとも言え、日本語も「これまでに習得した日本語を伸ばし」「日本語を手段として勉強する」段階に入りますから、英語を第二母国語として習得したバイリンガルの子供は、英語も同じ段階に入っていくことになります。

この時、子供には、手段として使える「言語」というツールが日本語と英語の二つあるわけですから、例えば、日本語の本を楽しむのと同じ感覚で、読みたい本があれば英語の本を読む、見たいビデオがあれば英語で見る、というのを絶やさず続けていけば、英語を失うことなく持ち続けていられます。

また、もう少し余裕があって、手間(やお金)をかけてあげられるなら、年齢や英語力に応じた素材(本やビデオやワークなど)を与えてあげることで、英語もどんどん引き上げていくことができますが、この「専門課程」は選択制ですから、ご家庭によって細かく素材ややり方を変えていく必要があります。

でも、あくまでオプションの専門課程に入っているので、そこまで目くじら立てて取り組むこともありません。

子供が楽しめる英語の素材を探して与えたり、子供が嫌がらない範囲で力がつくだろうと思う取り組みに導いてあげたりしていけばいいと思います。

むしろ、英語の必修課程を修了している分、英語以外の興味を伸ばし、日本語での思考能力を高めていくことを優先していってもいいのではないか、と思います。

そして、英語力の維持・強化については、幼児期とは違って、それぞれのお子さんの個性や興味に合わせて、かなり細かいオーダーメイドが必要になってくる(でもそれは必修ではない)。

小学校のおうち英語に関しては、今のところ、私はそんな風に考えています。


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