私は仕事で、いろんな「英語のできる人」との交流があり、また「英語を勉強している人」の指導にもあたっています。
最近の若い人には「英語のテストの点数は良くないけど、耳の良い人」も多く、そういう人はほとんど例外なく、小学校までのどこかの時点で「英語を習っていた」とか「家で英語を聞く機会があった」人です。
その後、中学以降で英語の「勉強」をしっかりやらなかったので、テストの点数も悪いし、きちんとした英語も話せないけれど、外国人の英語を聞いても「何となく」分かって「何となく」意思疎通ができる場合が多いです。
そして、大人になって「何となく」では済まなくなり、必要に迫られて英語の勉強を始めることになったら、リスニングが苦手な人よりも伸びが格段に早いです。
このように、小さい時に音を聞いておくだけで、中学以降の英語がラクなのはどうしてでしょうか?
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それは、脳内で「英語の音」が「英語という言語」として処理される準備ができているからです。
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言語として「英語の音」を処理する準備ができている必要性
「英語に対する『脳の抵抗』は小学生のうちになくしておこう」という記事にも書いたことがありますが、小学校時代までに英語が流れている(おうち英語の)環境にいるだけで、「英語の抵抗がない」すなわち「英語という言語をそのまま(日本語に変換せず)処理する準備ができている」状態になります。◆
どういうことか?
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何度も書いていますが、英語は言語で、言語の本質は「音」です。
例え文字を読んでいても、頭の中では「声」がします。
たとえば次の文字を目にしたら、頭の中でどんな声が聞こえますか?
「おはよう」
では、これは?
「صباح الخير.」
この記号のような文字を見ても、私の頭の中からは、どんな声(音)も聞こえてきません。
では、これは?
「안녕」
実は私は、学生時代にハングルを少し習ったことがあるので、読むだけなら「あんにょん」と読めました(笑)
では、これは?
「早上好」
漢字はもう反射的に「そう、じょう、すき?」と日本語の音読み(あるいは訓読み)で読んでしまいます。
しかし、いずれの場合も、その(ひらがなの)音が頭の中に鳴っています。
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他にも「おはよう」を意味する外国語には、「Kuhle ekuseni.」「Καλημέρα.」「Доброе утро.」「Bonjour」「Guten Morgen」「Good morning」などがあるらしいです。
(全部 Google 翻訳で出したので、合ってるかどうかは分かりません 笑)
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では、今見た単語の中で、「じゃあ、これを全部覚えてください」と言われたら、どれだったら覚えられそうですか?
「Bonjour」「Guten Morgen」「Good morning」あたりは覚えられそうな気がするし、「早上好」も覚えられそう、私は「안녕」は(一応)読めるので覚えられそうですが、あとは辛うじて「Kuhle ekuseni」を「クーフル・エクセニ、かな?」と勝手にカタカナに変換したら覚えられるかも、という程度です。
「Καλημέρα.」「Доброе утро.」とか覚えられる気がしないし、「صباح الخير.」に至っては、もう「覚えられなければ死んでもらう」と言われても覚えられません。◆
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これは、文字を見ても、脳がそれが言葉だと認識したら、何かしらの音を当てはめようとするからで、写真記憶などの特殊な能力がない人は、文字を見ても、音が当てはめられないと覚えられないのです。
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この時、覚えるためにあてはめようと使う音は、私達が習得している「日本語の音」です。
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脳には言語を司る部分(言語野)があり、そこに本能で習得した母国語の部屋(日本語の部屋)ができるのですが、そこでは言語を「音」として処理しています。
文字から入ってきた言語情報でも、脳内ではその文字が音に変換されて処理されます。
つまり、英文を読んでも頭の中では音が流れているわけです。
「Good Morning」という文字を見た時に、カタカナ英語でしか読めない人は、日本語の部屋で英語を処理しようとしているので、英語が難しく感じます。
また、「صباح الخير.」のように、まったく音が流れない文字を読んでも、全然言語として処理できません。
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英語を「英語という言語」として処理できる状態にしておく
このように、英語だろうが何語だろうが、文字を見ると、私達は音を当てはめようとします。
おうち英語で英語の音を習得して育った子なら、英語の文字を読んだら、頭の中で英語の音を当てはめますが、英語の「音」を習得していない日本語話者が、英語の文章を読んでいる時に当てはめるのは、日本語の音です。
これでは、いつまで経っても英語の部屋(英語回路)ができません。
つまり、脳が「英語の音」を「英語という言語」として処理できる状態になっていないわけです。
この状態で、中学の教科書(読み書き)中心の学校英語を始めると、英語を処理する部屋がないため、同じ「言語」である「日本語の部屋」で処理しようとしてしまいます。
つまり、本来その言語を処理すべき部屋とは別の(しかも、英語と日本語と言う全然言語体系が違う)部屋で処理しようとするため、難しくなるのです。
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ですので、中学で教科書(読み書き)中心で英語を習い始める前に、せめて英語の「音」を入れておいて、脳に英語を英語の音のままで処理する準備だけでもしておいてもらうと、その後の学習がスムーズに進むのです。
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バリバリのバイリンガル小学生を育てるつもりはなくても、NHKの基礎英語を聞かせておくだけでも違います。
(昔と違って、今はラジオ講座もストリーミングでいつでも聞けますし)
(参考記事:「小6の英語」「『基礎英語』プラスアルファの使い方」)
「聞きなさい」とか「分かった?」などとお子さんにストレスを与える必要は全くありません。
(というか、ストレス与えるぐらいだったら、むしろ流さない方がいいです)
(参考記事:「英語は『教えない』」)
「聞かなくていいよ」「お母さん、英語の勉強やり直そうと思って」と言って流すだけでも、やるとやらないではその後の英語の苦労が全然違います。
(参考記事:「私がおうち英語されていた」)
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無理のない「おうち英語」を是非、始めてみてください。
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ちなみに、例で使った外国語は、上から順番にアラビア語、韓国語(厳密には朝鮮語)、中国語、ズールー語?(Zulu)、ギリシャ語、ロシア語、フランス語、ドイツ語、英語、でした。
「おうち英語で子供をバイリンガルに育てたいけど、一人でできるかどうか不安」というお母さん(お父さん)のために「おうち英語の会」をやっています。興味のある方は、お気軽にお問い合わせください。